風が、吹いた
さっき見た人影は、忽然と姿を消していた。
いや、最初から居なかったのか。
あぁ。
忘れてなんか、いないじゃないか。
忘れることなんて、できてないじゃないか。
私の中に、貴方はまだ、こんなにも、鮮明に居るじゃないか。
笑えてるなんて、嘘だ。
本当は泣いているのに、笑った振りをしているだけなんだ。
「はは…ばかみたい」
私はいつも、どこかに貴方を探しているのに。
荒れ狂う海から走ってくる波は、私の足元まで襲う。
「ふっ…うっ…」
流れる涙は、大雨のせいにできる。
だけど、溢れるこの想いは、なんて説明したらいい?
逢いたい逢いたい逢いたい。
ただ、貴方に、もう一度、逢いたい。