風が、吹いた
焦がれた貴方
水に浸したタオルが、額にのせられたのを感じた。
うっすらと瞼を開くと、冷たい蛍光灯の光が眩しい。
「…目、覚めた?」
吉井だ。
彼女は安心したように、ふっと優しく微笑んだ。
と、思った瞬間それは般若のような形相に様変わりする。
「この……大馬鹿者ーーーーーーーー!!」
「…すみませんでした」
熱がある筈なのに、何故か私はベットの上で正座して彼女に謝っていた。
「大体ねぇ、あんな台風が直撃している海に!普通!飛び込む人間があるか!」
吉井は左手を腰にあて、右手で拳をぶんぶん振り回している。危険だ。
「…飛び込んだんじゃないよ、波が襲ってきたんだよ」
一応事実を伝えるが、バン、と拳で床を叩かれた音で、口を噤(つぐ)んだ。
「どっちだっていいんじゃい!それで、タクシーの運ちゃんに助けてもらって!途方にくれてる所にちょうど私があんたの携帯鳴らしたから、こうやって今!介抱されてるんでしょ!!私のタイミングの良さを褒めろ!」
「…すごいです」
言われたとおりに褒めてみた。