風が、吹いた

次に目を覚ましたのは、夜中だった。



喉、渇いたな。



そう思って、体を起こそうとすると、ベットの左側に重みを感じる。




「…?」




不思議に思って、照明が消された中、必死に目を凝らす。




「あ、浅尾。だ。」




小さく、呟いた。



浅尾はベットの端っこに顔と腕だけのせて、眠っているようだ。



吉井と交代して、来てくれたんだろう。





仕事を抜けてくるのも大変だろうに、2人は本当にいつも私のことを考えてくれる。



黒くて真っ直ぐな髪を撫でて。




「ありがとう」




囁く。



と、浅尾の瞼がゆっくりと開き、暗闇の中で目が合った。




「くら…もと…?」




段々と、彼の焦点がはっきりしてくると、がばっとベットから顔を上げた。




「お前、大丈夫なの?」」



心配そうに私を見つめる彼に、頷いてみせる。




「ほんと、心配したぜ…」



浅尾は、はぁーっと深く息を吐いた。




「ごめんなさい…」




私は居たたまれない気持ちで、項垂れる。
< 406 / 599 >

この作品をシェア

pagetop