風が、吹いた
『皆さん。森明日香です。どうぞ、宜しくお願い致します。』
彼女がお辞儀すると、拍手が起こった。
『…さて、この娘に、今事業を少し手伝ってもらっています。そして、我が森グループは新しいパートナーを見つけました。』
森氏はそこで一旦言葉を切り、明日香が先ほど出てきた辺りに視線を送り、頷いた。
『嘉納コンツェルンという素晴らしいパートナーです!』
会場内がにわかに騒がしくなる。
遠目に男性らしき人が、前に出てきたのが見えた。
心臓が、ドクンと跳ねた。
色素の薄い、髪。
見上げてしまう程の長身。
そして―
『ご紹介に預かりました。嘉納コンツェルンの代表取締役を務めさせて頂いております、嘉納孝一です。』
焦がれてやまない、大好きな、声。