風が、吹いた
組んでいた腕を解きながら、加賀美は彼女に詰め寄った。
「おかしいなと思ったんです。私が高校の時のあの人の事を友人に電話した時も。その日のうちに何故か貴女からの連絡があった。」
「何がおっしゃりたいのか、わからなくてよ?」
笑い声を漏らしながら、森はボーイからワインを受け取った。
「特に話したこともない貴女が研究所に来ると言った時も。私が話したわけではないのに、株主というだけで倉本さんの事を知っていたということも。わざとらしく、できすぎていました。」
森よりも、背の高い加賀美は、彼女を見下ろすようにして、訊ねる。
「貴女、本当に倉本さんの幼馴染みなんですか?」
森のグラスを持つ手が、ぴくりと震えた。