風が、吹いた
「私が、嘘を吐いているとでも?」
「逆に教えてください。私が倉本さんに高校の時のシイナさんの名前を確認したがった時、何故、貴女は嘉納という名前のみを出したんでしょうか。私は、自分の記憶と友人から聞いた名前とに違和感を感じていたので、あれから少し調べたんです。貴女の息のかからない所でね。」
森の顔が、不愉快そうに歪むが、構わず続けた。
「彼の名前は、シイナコウイチでした。私の記憶とも一致しました。あの頃、トップの成績だったにも関わらず、転出して話題になっていましたよね。そして、倉本さんと同じ学校に在籍していた筈です。」
「だったら、なんだっていうの?」
「シイナさんが挨拶した時確信しました。倉本さんは、シイナさんの事を知っていると。なのに貴女は研究所で彼のことを隠しましたね。そして上手く今回のパーティーに呼んだ。目的は一体何です?」
俯き、答えない森の代わりに、加賀美が再度口を開く。