風が、吹いた


「ん?何これ」




ちらっと目を通した倉本が、2人に訊く。




「…それ、たぶん、椎名先輩なんじゃないかって…」



言いにくそうに呟いて、吉井が写真を指差した。




ホテルで行われたパーティーだろうか。マイクを使って話している彼と、そのすぐ傍に立つ女性。




「あー、知ってる。」




倉本が呟いて、写真に指を置く。



不可解な行動に、浅尾と吉井は顔を見合わせた。




「…え、倉本。俺らが言ってんのは」




「森明日香」




ふふ、と倉本が笑った。






「私の、幼馴染みの、あすちゃんだよ、これ。」




少し嬉しそうに、彼女は語る。




「ち、違うでしょ。そっちじゃなくて、こっちの方」



動揺しながらも、吉井が椎名先輩を指す。




「え?」




倉本が首を傾げた。




「え、じゃねーだろ。これ。ちょっと大人っぽくなってるけど、どう見ても椎名先輩だろ」




「へ?」




浅尾の声に、今度は反対側に首を傾げる。






「椎名先輩って、誰?」

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