風が、吹いた

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アパートの前。




「送ってくれてありがとう」




倉本は浅尾を見上げて、言った。



寒さを含んだ風がひゅぅと通り抜ける。




「やっぱ、もう寒いね」




肩を縮ませてそう呟いた彼女の頬に、浅尾はそっと触れた。




「…なぁ、倉本」




一瞬ぴくっとした彼女は、固まって浅尾を見つめる。







「キスしていい?」










「…え?」




理解したと同時に、彼女の頬が熱を帯びた。




「えぇ、いいいや、あのあの…」




彼の手が、熱っぽく頬に触れる。



もはや、お互いにどちらの熱なのかもわからない。




「…駄目?」




拗ねたように言う彼に、



「そ、い、いや、心!心の準備が…」




狼狽して、言い訳をする彼女。



が。



そんなの耳に入っていないかのように、彼の顔が、すっと彼女に近づく。




「…もー…待てない。」




思わず、彼女はぎゅっと固く目を閉じた。

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