風が、吹いた
想いとは裏腹に、再会はすぐにやって来る。
4月。
桜の花も散り終わり、鮮やかな緑の葉があちこちで息吹く。
教室の窓から流れてくる風も心地よく、射し込む光によってできる陽だまりが暖かい。
「なぁなぁー、今年の新入生、見た?」
突然、前の席の橋本が、声を掛けてきた。
「…興味ない」
本を読んでいたところを邪魔された方が、自分にとっては問題で、不愉快だった。
「いやー、椎名は相変わらず氷のような男だな!」
がははっと笑う。
この男は、強引に俺をサッカー部に連れ込んだ男だ。
いつでも癪に障る。
が、何故か憎めない。
無視して、再び本に目を落とすが、構わず橋本は続ける。
「なんかなー、今度トップの成績で入学してきた子、めちゃめちゃ美人らしいぞ。俺まだ見てねぇ。今度の新入生歓迎会が楽しみだなこの野郎!」
にまり、と笑って俺の肩を叩く橋本は、はっきりいって気持ち悪い。
「ちょっとは、勉強の方、心配したら?」
橋本を見ることなく、彼の手を払って、少し冷たく言い放つ。
「目の保養だよ、ほ・よ・う!人間には少しの努力と沢山の息抜きが必要だ!」
呆れて言い返す気も失せた。