風が、吹いた
子供染みてる。
そう思いながらも、なぜか思い留まることができずに、俺はカルモの店主に頼みに行った。
駄目元ではあったが、諦め切れなかった。
幸い、店主の佐伯さんは快諾してくれて。
本当に、これは最初で最後になるだろう、俺の我が儘だ、と思っていた。
どんどんと、欲が増えていってしまうなんて、この時は知り得なかったんだけれど。
まさか、カルモで彼女がバイトしているなんて偶然が待ち受けているとは思わなかったから。
『どうかな、働かない?うちで』
佐伯さんの言葉に、調子に乗って頷いたりしなければ、彼女をあんなに傷つけるなんてことなかったのに。