風が、吹いた




『…高校生活の3年間だけ、家を出させていただけませんか。』




表向きの生活が、落ち着きを見せた頃、俺は言った。



息子の初めての反抗とも取れる申し出に、勿論、どちらの家も、良い顔をしなかった。




理由は簡単。




家名に傷がつくからだ。




しばらくして、やっと了承を得た時には、条件が幾つか並べられることになっていた。



例えば、身分を学校長以外に洩らさないことや学校のレベルを落とさないこと。大学は親の決めた所に行く、などだ。




なんでも良かった。




ここから、離れられるなら。




自分を人間としてすら見ていない、この場所から、



出ていくことができるなら。



それがたとえ、ほんの少しの間でも。




卒業まで、家との関わりを断つ。




これが、俺からのたったひとつの条件であり、願いだった。
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