風が、吹いた
我が儘になれよ。
じっと、変わることのない、携帯の待ち受けを見つめる。
とりあえず横に置いて、資料をトントン、とそろえる。
また、携帯を見る。
溜息を吐く。
資料をホッチキスで留める。
携帯を見る。
「…なぁ、倉本。訊いていいか?」
「駄目です」
「な…!…ぼーっとしてる癖に即答かよ。……さっきから携帯気にしてるけど…連絡待ちの奴が居るのか?」
「東海林さんに関係ありません」
今度こそ、東海林は言葉を失う。
奥で、田邊が笑いを噛み殺していた。
あの日を境に、浅尾から連絡が来ない。
何度かメールを送ってみたけど、返事も来ない。
電話も出ない。
絶対、気分を悪くしちゃったんだ。
そう思うと、落ち込み度が大きすぎて、堪えきれずに机の上に突っ伏す。
「…なぁ」
東海林の呼びかけに、ごろん、と顔だけ横に向けて目で何だと訴える。
醸し出される機嫌の悪さに、うっ、となりながらも、彼は尋ねる。
「なんで、最近屋上にいかないんだよ?」
ー言われてみれば、そうだ。
前はあんなに好きだったのに。