風が、吹いた

「あ、そうだ。倉本君。大分前に話していた息子のことだけど。倉本君の話をしたら、アメリカの大学について調べ始めちゃって親としては参ってるんだよ。まぁ悩むのはタダだからいいけどねぇ。その前に成績で悩んで欲しいよ。」




田邊は、恐らく気を遣って、笑い話を持ちかけてきたのだろう。




「こないだは訊きそびれてしまったけど、倉本君のその知り合いは何処の国の大学にいたの?」




頭が、痛い。




起き上がって額を押さえる私を、田邊も東海林も黙って見つめる。




「…すみません。私、そんな知り合いが居るって言いましたか?」




小さく訊き返した私に、田邊は驚いたように頷く。




「確かにそう言ってたけど」




なんでだろう。



気持ち悪いくらいに、思い出せなかった。
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