風が、吹いた



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「それは、恐らく心因性健忘症でしょう。」




浅尾、吉井、加賀美という、何ともおかしな組み合わせが、研究所近くのカフェに顔を揃えていた。




「なんだよ、それ。」




浅尾が難しい顔で、訊く。



「精神的な原因、つまり、ストレスの積み重ねにより、過去の記憶が突然なくなったり、部分的に空白になる疾患の事です。今回の件では、私が森の思惑に気づかずに会わせてしまった事がきっかけだとは思います。申し訳ありません。」




加賀美が、座りながら、深々と頭を下げた。




「いや、加賀美さんは悪くないでしょ。悪いのは森と、志井名先輩でしょ」




吉井がバンバンとテーブルを叩く。
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