風が、吹いた
デスクの上にある受話器を取って耳に当て、番号を押す。
コール音が響き、すぐに秘書が応対した。
「俺だ。あぁ、嘉納会長に繋いでくれ」
数秒すると、父が電話に出た。
《孝一?どうした?》
おおよその見当はついているらしく、声が少し興奮しているのが伝わる。
「上手く行ったみたいです。今報告を受けました。」
《かなり早かったな。事実なんだろうな?下手な小細工とか使われていないよな?》
父は、疑心暗鬼になっているようだ。
「信頼できる男ですから。リークする時期をできれば年内にお願いしたいと言っていました。」
《はは、そうか。冬休みを取りたいんだな。わかった。もうそれまで10日ほどしかない。確認作業と準備に5日くらいかかるかもしれないから…25日辺りにぶつけてみるか。クリスマスプレゼントだ。》
「わかりました。そう伝えておきます」
《お前は、娘の方をなんとかしとけよ》
「…はい」
正直、ここまでくれば関わりたくはないが、仕方がない。清算はきっちりとしなければ。