風が、吹いた



軽く咳払いをして、彼は続ける。




「2つしかない、ということは、荷物は2つしか持てないということです。それ以上は捨てるか、諦めるか、背中に背負うかしなくちゃならない。」




浅尾の言うことに、呆気に取られながらも、一応理解する仕草を見せなくてはと頷いてみる。




「ということは。両手に持つものが、最優先されるわけです。」




そこまで言って、浅尾は手で何かを持つ真似をする。



「右手は、戦えるものを持つ。左手には一番守りたいものを持つ。」




ちなみに、と続ける。




「左は心臓に近いですから、守りたいものは、時に自分を守ってくれる存在にもなるそうです。」




右手では何かを持ったまま、左の拳で心臓をトン、と軽く叩いた。
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