風が、吹いた
狂い咲きの桜
来る者を選ぶかのような、厳かで、数メートルあるだろう高い門。
その前には、物々しい監視カメラと、配置されている無表情の警備員。
いつもと同じ風景は、いつもと違い騒がしく。
押し掛けた報道陣が、それぞれ思い思いにリポートしている。
車に乗っても案内がなければ、大豪邸に辿り着くまでに迷ってしまうのではないか、と思うほどの敷地面積は如何程(いかほど)か。
その頂点に座す老人が、一人。
「雪が、降りそうだな」
広い窓から外を眺め、些か疲れたように呟いた。
ふと、生じた静けさが、冷たい風を運んでくるように感じた。
暖房がかかるこの部屋で、それはあり得ないことなのだが。
軽く首を傾げた所に、コンコン、とノックする音がした。
面倒だと感じつつ、何だ、と声を掛ける。
「失礼致します」
ロボットの様に、無駄な動き一切無く入ってきた男は、老人を見て機械的に一礼した。