風が、吹いた
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真夜中の、呉間第一研究所。
一人の女が、煌々とLEDの光に照らされて、ピペットで何かを吸い上げている。
その光景を、実験室のガラス張りの窓の影から、2人の男女が覗いていた。
所内を照らすのは、青白い光と、非常口の光だけだ。
「…おい、なんなんだよ、あれは。」
「……知らないですけど、ここの所毎晩あんな感じなんです」
「で、俺にどうしろっていうんだよ…」
「わからないから、呼んだんじゃないですか!その無駄に良い頭使ってくださいよ。じゃないと永久に役立たずってあだ名つけますよ。」
「はぁ?!」
ぼそぼそと会話するものの、結局の所、どうしていいのか分からない。
「とりあえず、声掛けるか?」
東海林が提案するが、加賀美は心底馬鹿にした表情で、一瞥する。
「ま、その程度でしょうね。」
やれやれと首を振った。