風が、吹いた



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頭の中が、空っぽだった。



今、何時だろうとか、



お腹が空いたとか、



眠い、とか。



そんな必要最低限のことすら、気にならずに、



ひたすら、目の前のことにだけ、心を留めていた。



『思い出して』



浅尾の言葉が、胸にずっと痛く響いていて、



自分も感じている自身への違和感を突き止めなくてはいけないと思うのに、



必死に気持ちだけが先走って、



結局空を掴むばかりだった。



その全てを上回る、罪悪感。



浅尾の切ない顔に付属するのは、愛情じゃなくて、罪悪感。



それを意味する部分が―



どうやら抜け落ちているらしい。
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