風が、吹いた



バンバンとガラスを叩く音に、はたと顔を上げた。



視線の先の薄暗い廊下には、加賀美らしき人物が見える。




なんだろう。




この部屋に入っているとどうも、自分が動物園の動物になった気がしてならない。



加賀美のことを忘れて、くるりと周りを見回した。



あれ、私以外、皆何処に行っちゃったんだろう。



帰ったのかな。



まー、いっか。



再び視線を自分の目の前の台に移した。



ガチャガチャ



ダン、



カツカツ



物音ひとつ、しないはずの実験室に、何故か三種類の音がする。



と思った瞬間。



バシッ



頬に、電流が走ったかのような、衝撃。
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