風が、吹いた

思わず、身体がぐらりと揺れて、尻餅をついた。




「!?!?!?!」




起きたことが、今いち理解できない。



じんじんと痛む頬に手をあてて、自分を見下ろしている人物を見つめた。




「倉本さん、そろそろ目を覚ましていただけませんか?」




微笑んでるように見えるのに、どうしてだか、鬼の形相にしか見えない。




「か、加賀美…???」




されるいわれの無い行為に、目を白黒させるばかりだ。



腰に手を当てて、もう片方の手で私を指差し、彼女は言った。




「ちゃっちゃと思い出して、とっとと元に戻りなさい!」




小学生の男の子がやんちゃして泥だらけになって帰宅した所を、お母さんにとっとと風呂入ってこい、と言われているような構図だ。


なんて思いましたとは、口が裂けても言うまい。
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