風が、吹いた


「今日は部活は臨時で休みだったんだ。」




できあがった名簿やアンケートの束をまとめていると、浅尾が呟くように言った。




「だから、制服だったんだ。」




と言うと、うん、と頷く。



「倉本が俺が部活やってるって知ってると思わなかった。」




立ち上がって鞄を肩に掛けて、さらに書類の束を両手で持とうとすると、横から手がのびてきて、浅尾の方が先にそれを掴んだ。




「失礼な。一応同じクラスなんだし。それくらい知ってるよ。」




やや口を尖らせて、言い切ると。




「じゃ、俺、何部?」




間髪入れずに浅尾が質問してくるから、答えに窮する。




「…すみません、知りません。」




こういうときは、潔く謝るに限る。
< 53 / 599 >

この作品をシェア

pagetop