風が、吹いた
さよならをもう一度
―桜の蕾がやっとつき始めた頃。
卒業証書を片手に、ひとり、屋上に来て、空を見上げていた。
「…やっぱり、ここに居たのかよ」
その声に振り返ると、少し息を切らした浅尾が、屋上の入り口からこちらを見ている。
「…浅尾…」
動揺を悟られまいと、敢えて視線を真っ直ぐに保った。
頭をぽりぽりと掻きながら、同じく卒業証書を片手に、彼はすぐ傍までゆっくりと歩いてくる。
「あっという間だった、な」
「…うん」
一瞬、頭の中で時間を遡ったような、不思議な感覚に襲われた。
「話すの…久しぶり、だな」
「…うん」
すぐに現実に引き戻される。
結局、私は浅尾の告白の返事を、2年も持ち越してしまっていたから、気まずいことこの上ない。