風が、吹いた
―千晶、目を上げて、見てみなよ。
ふいに掠めるいつかの貴方の声。
―世界はこんなにもキレイなんだよ。
思い出される、貴方の腕の中。
―でも、見てくれる人がいないと意味がないんだ。
頭を撫でる、貴方の大きな掌。
―こんなに大きい世界も、誰も居なかったら寂しいと思うんだよ。
でも。
そこに貴方が居なかったら。
私の眼に、世界はキレイに映らない。
貴方が居ない世界なら、
私には居る意味がない。
私の持つ世界は、
貴方が居ないと、直ぐに寂しいと云う。
ちっぽけで、小さくて、誰の眼にも止まらないけれど。
貴方さえ居れば、これ以上ないほどに、輝くのに。
なのに。
どうして。
いつも。
手が届かないんだろう。