風が、吹いた





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忘れた方が良い。




そう言った、運転席の男は、ミラー越しにちらりとむせび泣く彼女に目をやる。



そして、可哀想に。と首を振った。




自分の発した言葉が、




彼女をまた、降り出しに戻させてしまったことに、気づかずに。




車は走る。




ここから少し遠い、彼女の家まで。




雪の降る中で。




ただ、ひたすらに。
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