風が、吹いた
「何の用だ」
緊張感が漂う場面なのに、目の前の女は場違いな程に真っ赤なコートを着て、美しく笑っている。
「取引しませんか」
志井名家の者達に戸惑いの色が浮かぶのを、女は益々楽しそうに笑いながら見ている。
「その人、私、欲しいんですけど」
ピッと、指差した先に、ほぼ動かない神林が居た。
益々動揺が広がり、リーダー格の男が首を振る。
「いや、それはできない。」
その反応に、女はうーん、そっか、と考え込む。
「でも、これ、私が見たってマスコミなんかに言っちゃうと、まずいんじゃないんですか。」
男達の動きが固まる。
「志井名はそれでも、そのネタ、あらゆる方向から手を回して止めちゃうんでしょうけど。」
そうだ、そうだ、と一瞬で安堵する男達。