風が、吹いた
「っじゃぁっ…孝一さんの気持ちはどうなるんですかっ!?」
突然喚きだした私を運転手が驚いたように腕を掴んでひっぱりだそうとする。
「あなたのためにっ!彼が犠牲になることがっ、どれだけ彼の心を蝕(むしば)んでいても!あなたはそれでいいんですか!?」
ぐいぐいとひっぱられる強い力に抗いながら、なおも私は続ける。
「人はモノじゃない!!!!迷って、生きて、誰かを愛するんです!そして愛されるために生まれてくるべきなんです!!!」
堰を切ったように溢れ出した大粒の涙が、散らばった。
「人は自分の進む道を自分でっ!決めることができる筈ですっ」
瞬間、思い切り強い力でグイと後ろに引かれて、固いコンクリの上に尻餅をついた。
バタンっと勢いよく閉まった音が、やけに大きく耳に響いた。