風が、吹いた

クラクションが鳴らされて、私を引っ張ったスーツの男が車から出てきて憤る。



「なんなんだ!?お前ら、ここは出口だぞ!」




ガチャリと音がしたかと思うと、白い車の運転席と助手席のドアが、同時に開いた。




「知ってるよー?だって、わざとだもん♪」




短い髪をさらりと揺らして、助手席の女が笑う。




「志井名さんに、お話があるんです。」




運転席から出てきた長身の女は淡々とした口調で話し、長い髪を鬱陶しそうに手で払った。




「な、そんなこと許すわけ…」




動揺しながらも対峙する男は厳しい顔で言いかける。


が。



ガチャリ。



今度はロールスロイスの後部のドアが開く。




「!?」




それに気づいた男が後ろを振り返ると。
< 576 / 599 >

この作品をシェア

pagetop