風が、吹いた

「そんなこと言われても、待てねーんだよな。こちとら寒い中随分待たされたんだからな。おせーよ、お前ら。」




モッズコートを着た、口の悪い男が一人、開いたドアに手を掛けたまま、目線だけ女2人に送る。



私は座り込んだまま、腰も抜かしたらしい。




「みんな…?どうしてここに…?」




呟きはやけに響いて、居合わせる人間の耳に届く。




「言っただろ。力になるって」




浅尾が白い息を吐き出して、笑った。




「くらもっちゃん、ナイスファイトだったよ!」




吉井が親指を立ててこちらにウィンクして見せた。




「思い出したようで、安心しました。あとはお任せください」




加賀美はこちらを見て、ふっと笑う。



そしてすぐに真正面を睨んだ。
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