風が、吹いた

「誤解しないで頂きたいのですが、我が家は貴方達のような狭い価値観ではありません。」




一触即発。



その言葉が似合うような、ピンと張り詰めた空気が立ち籠める。



沈黙の後、ひっひっと引き笑いが老人から漏れる。




「ほぉ、それで？その麗しき家の娘がこんな所に何しにきた？美しき友達ごっこでも始めようというのかの？」




心底馬鹿にしたように、志井名は嘲笑った。




「…孝一氏と倉本さんの邪魔をしないでいただきたい。と、言いに来ました。」



加賀美の言葉に、笑い声はさらに強まる。




「実に無駄なこと、じゃな。そして時間の無駄、だ。それを聞いてワシが、許すとでも思っているのか。馬鹿馬鹿しい。」




そう言って、志井名はくるりと加賀美に背を向けた。