風が、吹いた
拒否反応
カランカラン
「あーおかえり。学校どうだった?」
少し息を切らして店に入ると、佐伯さんが笑顔で迎えてくれた。
「普通でしたけど、少し居残りさせられて、いつもよりぎりぎりになってしまって、ごめんなさい。」
連絡を入れていなかったことに気づいて、慌てて謝罪する。
「間に合ってるから謝ることないよ。それに孝一くんから聞いてたから。」
そう言って、奥のテーブルで接客している彼に目をやる。
「…どうして、彼、毎日入ることになったんですか?」
エプロンの紐を腰でリボン結びしながら、声をひそめて、尋ねる。
「なんか、早く慣れたいっていってたのと、お金にちょっと困ってるみたいだから、かな?まぁ、僕も今は余裕があるからできるけど。この体制はしばらくだけかな。落ち着いたら戻すから。だから、ちょっと我慢してくれる?」
「…わかりました。」
手を洗いながら返事をして、自然と溜め息を吐いていた。
佐伯さんが、そんな私の傍にきて。
「でも、千晶が居残りなんて珍しいね。何かあったの?」
と、こそっと聞いてきたが、私は曖昧に笑って、言葉を濁した。