風が、吹いた
「私は、思うのです。孝一様は、貴女が来るのをきっと待っている。と。志井名の前で私個人には何の力もありませんが、なんとかして貴女と会わせたいと考えておりました。」
俯きながら背を向けて囁くように話すので、大分聞き取りにくいが、ひとつも零れ落ちないようにと耳を欹(そばだ)てる。
「でも、貴女は良い友を沢山お持ちのようですね。。孝一様も…やっと自分を通すことを、、認められたようでしたから。私は心から、感謝しております…」
ふいに私と向き合い、深々と頭を下げた。
「っ、顔を上げてくださいっ」
慌てて促すと、沢木は顔を上げて、またふわりと微笑んだ。
「どうぞ、中へ。」
軽いノックと共に、開かれたスライドドアの向こう側。
いつの間にか顔を出した陽の光が、大きな窓から白いベットにキラキラと射し込んでいる。
そして、そこに静かに眠る、
愛しい、人。