風が、吹いた
「じゃ、お先に失礼します。」
目を合わさないようにして、ぺこりと礼をすると、鞄を掴んで逃げるように外に出た。返事も待たずに。
カランカラン
金色のベルが鳴る。
少し分厚いジャケットを着ているけれど、大分寒い。
しばらく、店の外の脇に停めてある自転車の前で、空を眺めた。
星がきれいに見える季節がすぐそこで、まだかまだかと待っている。
もう十分綺麗だけれど、凍えるほどの寒さの中、空気が澄んだその時に見る空は、きっと去年の記憶以上に美しいだろう。