風が、吹いた




暗に、「今日はいいから」という言葉をくれる。




「…佐伯さん……」




呼べば、ん?と返してくれる。




「私、人と関わるってこと、面倒だとしか、思えないんです。」




自分でも、沸き起こるこの感情を制する術を、知らない。




「誰かが、私のことを聞いてくること自体が、面倒で、嫌で仕方ないんです。」



―だから




「だから、私はひとりがいいんです。」




悲しくなんかない。



ずっとひとりだったんだから。



泣かない。



だって、悲しくなんてない。
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