風が、吹いた
「はは…」
乾いた笑いは相手からか、いや、自分からか。
「先輩は…ずるいなぁ、ほんとに…」
私の居場所も、わずかに求めていたものも、全部先輩のものにしてしまって。
これが、この気持ちが、どんなに自分勝手な言い分で、どうしようもない自分を露呈しているだけだとしても。
それでも―
「こんなにピンポイントで、私の唯一のものに、入り込んでこないでよ…」
言わずにいられない。
先輩と屋上で会ってから、あの日から、私の中の何かが、いつもと違う。
それが何かがわからなくて、行く当てのない思いが、自分を乱す。
なのに―
「先輩は、私の生活に入ってくる」
何一つ、自分のものなんて、私にはないってことを、嫌でも理解させられる。
彼はただ、生活しているだけ、なのに。