風が、吹いた
「ごめんなさい」
とっさに顔を隠して、自転車の存在も忘れ、立ち上がった。
彼に背を向けて、走り出す。が、それは叶わなかった。
先輩が、私の腕を掴んで離さなかったから。
まずい。
このままここにいたら、
私は自分を傷つける。
「………放して、ください。」
「千晶」
腕を掴んだ彼の手に力がこもるのが伝わる。
「…………」
歯を食いしばる。
「泣いてるの?」
気づかないで欲しい真実を、彼は突きつける。