君と奏でる音[前編]
桜の演奏者
メンデルスゾーン/春の歌
真っ青な空に吹く風が、僕の頬を優しくなでた。
桜の花びらが、僕の肩にひらりと舞散る。
4月。14歳の僕は中学3年生になった。
どこからか、ピアノの旋律が耳に響く。
「これは…メンデルスゾーンの…春の歌?」
その旋律は静かで、聴く者の心を落ち着かせた。
その中でもどこか寂しく、時に楽しく。
「感情豊かな演奏者だ」
僕の指は自然と踊っていた。
あの頃のように…。
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