君と奏でる音[前編]
初めてのコンクールの結果は"優勝"だった。
先生はすごく誉めてくれた。
『すごいね!よく頑張ったね!』って。
それからだ。先生が僕に対しての態度が変わったのは。
何というか、前より厳しくなった。
ほかの子に対しては優しい"泉田先生"なのに。
コンクールに出る度、僕は1位や2位を取り続けた。
『譜面通りに弾いているのに、ワクワクして暖かい気持ちになる演奏だ』
そう評価を受け、わずか9歳ながら審議会上層部の間では演奏会の一つの目玉となっていたらしい。
年数を重ねるごとに僕の知名度も技術も上がった。
会場はほぼ満席。
けれども僕の演奏が終わるとポツポツと人が減っていった。
『ほかの子の演奏は聴かないの?』
『みんなしっかり聴いてあげて!』
僕だけの演奏会。
ほかの子は僕の引き立て役。誰かがそう言ってた。