君と奏でる音[前編]
12歳の10月のコンクール。
その日、僕は出番が来るまで控え室でイメージトレーニングをしていた。
そんな中、二人の男の子の会話が聞こえたんだ。
今でも鮮明に覚えてる。
「また1位はアイツか。どうせ指導者のコネなんだろ?」
「ちょっとは手加減しろよ。俺の親『桐城くんに勝ちなさいっ!』ってうっせーの」
僕はコネなんかで此処にいるんじゃない。
実力だ!って言いたかった。
その二人に便乗するかのように、あちこちで悪口が飛び交うようになった。
『泉田のコネ』
『偽りの天才』
そんな異名までもつけられた。