君と奏でる音[前編]
コンクール
放課後、呼び出された旧校舎3階音楽室の前に立つ。
この教室は、新校舎が建てられてから使われなくなって人はほとんど来ない。
だから周りには誰もいないし廊下はしんと静かだった。
そんなところに一つの旋律が流れ出した。
ドビュッシー/アラベスク第1番
静かに、穏やかな旋律の中に奏者の心があった。
それは、誰かを想う心。
誰かに対する怒り、悲しみ、嬉しさ。
この音楽はつい昨日聞いた音と同じだった。
感情豊かな演奏者…。