君と奏でる音[前編]
「なんで僕なの?僕は…」
「ピアノを弾くことをやめた…でしょ?」
…言おうとしていた言葉をそっくりそのまま言われて驚いた。
エ…エスパー!?
「弾くことをやめたってことは、弾けなくはないんでしょ?」
「でも…!」
「桐城くんの言いたいことはよく分かる。それでも…君がいいの。あの頃の音は出ないかもしれない。あの頃の感情はないかもしれない」
僕の握る拳がふるふると震えている。
…君は、僕のなにを知ってそんなことを言うんだ。
「…上等!」