君と奏でる音[前編]




 そんな私にもずっと話しかけて、ほぼ毎日来てくれた人がいた。
それが幸ちゃん。水橋幸音。


 明るく元気でスポーツ万能。おまけに頭もよくて。
完璧な子。私の憧れだった。


 だんだん幸ちゃんと話すのが楽しくなって、精神も安定してきた頃。
幸ちゃんはクラシックの音楽を持ってきた。


 初めは『嫌がらせ』かと思った。
だって私が入院している理由を知っているのに、わざわざクラシックを聴かせるなんて。


『聴きたくない!やめて!』って言っても幸ちゃんは黙ったまま。
堅く両耳を塞ぎ音を拒んだ。
すると幸ちゃんの手が私の体を優しく抱きしめ


『大丈夫。怖がらないでゆっくり音を聴いてみて。狐乃葉は音楽が大好きなんだよ。安心して。ね?』



そう言ってくれた。








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