君と奏でる音[前編]
罵声
逃げるな
ゴォォォー…と暖房の音が聞こえる。
シャーペンが机を叩く音。ペンが丸を書く音。
時々鳴る部屋のきしむ音。
世界は音で溢れている。
かつて僕のまわりにも音が溢れていた。
ショパン、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン。
今は無音だ。
何もない。全てを捨てた。僕の中の音を全部。
これ以上音と生きていけなかった。
僕が音を奏でるだけでまわりを不幸にしてしまう。