君と奏でる音[前編]
午後6時。家に帰ると珍しく母さんがいた。
いつもは仕事で家に帰ってこない日が多いのに。
母さんは夕飯を作っていた。
久々の母さんの手作りだ。
「おかえり。今日はポークカレーだよ」
「うん。今日仕事早かったの?」
僕は荷物を置いて冷蔵庫をあける。
あ、リンゴジュースがない…。
「仕事…ね…」
「…ん?」
ピーンポーン
母さんが言いかけたところでインターホンが鳴る。
今何か言いそびれたよね。