君と奏でる音[前編]







 母さんが泣いているのだから。
なんで?



「え?お母さん?大丈夫ですか?」
「えぇ、ごめ…んなさいっ。奏介がピアノを…弾くってことが…うれ、しくて…」



肩をしゃくりあげながら母さんは言った。
複雑だ。


僕は…どうすればいい。
ピアノを弾くべきか否か。

弾かないと母さんを苦しめることになる。
はたまた弾けば自分が苦しむ…。


でも。



「八瀬さん…」



僕は…。






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