☆Friend&ship☆ -序章-
涙をこらえてゼウスはキングに話しかけた。
「あいつ飯作っててくれたの?」
「そうみたいだな」
「そっか」
ぷくーと膨れて透明な机に突っ伏すゼウスをキングは苦笑いしながらぽんぽんとたたいた。
「遊びたい」
「おいおい」
「だってーかまってくれねえんだもーん」
「ガキかお前は。それ半分あいつにあげてほしいんだけど」
「喜んで」
「できねえだろうがバーカ」
「すぐバカバカいうな!」
「だって馬鹿じゃねえか」
言い返せずぶすっとしたところでタナトスがひょいと顔を出した。
「食うか…」
「うん!」
「顔面蒼白だぞ大丈夫か?」
「…大丈夫」
本当かよ、と疑わしげなキングの視線を潜り抜け、ふらふらキッチンのほうへ戻っていく。
ゼウスはそのあとをひょこひょこついて行った。
「じゅー」
「!」
「熱あるけど?明らかに」
後ろからいきなり首筋をつかまれてタナトスは一瞬硬直。
慌てて飛びのき何をする、とごく冷静に言った。
「休んでろ」
「ほら、今日はピザ」
「ごまかすなー」
「ほらほら、さめるぞ」
思いっきり不機嫌そうに顔を盛大にしかめた後、ぶーぶー言いながら半径30cmはあろうかという巨大なピザにかぶりつく。
タナトスはそれをちらりと横目に見たあと、ピザ生地を指の上に乗せ、くるくると回し始めた。
「もっと楽なのでいいぜ」
「うまいか」
「うん。ってか隈できてる」
きれいな顔が台無しだぜ、と軽口をたたけば、何の話だと言われ、感情の高低が激しいゼウスはズーンと落ち込んだ。
「わー無自覚」
「…まだいるか」
「うん。だからさ、なんで朝からそんな手間のかかるもの作ってんの」
「好きだろ」
「大変じゃねえの?」
「別に」
「よし、じゃあ大変なんだな!」
「大変なわけがないだろう」
「なんでー大変に決まってんじゃん」
だんだん大きくなってきたピザをひょいと上に投げ始める。
たちまちものすごい大きさになってきた。
「いっつも寝るの深夜すぎだろ?」
「ああ」
「んでおきるの30分後だろ?」
「ああ」
「少ないよ」
「別に」
「よし、じゃあ…」
言いかけたところでついに直径1mを軽く超えた巨大な円盤が出来上がった。
「少ないわけないだろう」
「よし、きーめた!」
「…」
またろくでもないことを考え付いたなガキめ、とこっそり暴言を吐いたタナトスにゼウスはそおっと近づいて行った。