☆Friend&ship☆ -序章-
ガン、という衝撃とともに目の前が真っ白になった。
もう一度意識を手放しかけたが、渾身の力でそれを振り切り、もがいて起き上がった。
ショッキングな光景からなるべく目をそらし、瞼を閉じて気を失うまでのことを思い出そうとした。
そう、俺は殴られた。
腹部を、唐突に。
殺気も敵意も感じなかった。
しいて言うなら邪気。
幼子が悪戯をするような、そんな気配だ。
振り返った瞬間に衝撃が走った。
みぞおちのさらに下、腹部の代表的な部分を殴られ吐きかけたがそこで意識が途絶えた。
相手が金髪だったことは覚えている。
倒れた後の衝撃が来なかったということは俺を支えたのだろう。
かすかに休めよ、という声が聞こえたような気がした。
まあ、幻聴だとは思うが。
で、起きたらこれだ。
白衣の男が俺に微笑みかけている。
この船で白衣を着るのは先日きたカウンセラー…キングくらいだ。
「お目覚めはいかが?」
「…」
船長ほどではないが整った顔たち。
垂れ気味の優しげな目元が印象的だった。
健康的に白い肌は医療系の仕事についている人物らしいものだろう。
親しげな笑顔は人をひきこむような力があるが、カウンセラーといえどもなかなか持っているものではない。
だが、誰でも憧れるものだろう。
憎めない人だ。
「…悪くはない。治療させて悪かったな。精神専門と聞いていたが」
「そんなことはないけどな。一応医者だからひと通り学んでは来てる」
「そうか。心強い」
森の隊がいなくなって、胸を張って医療に精通しているといえるのは俺と船長だけになってしまった。
べつに、おれは胸を張れはしないが。
「数日は安静だからな」
「何日たった」
「三日くらいだ」
「経ちすぎだろう。もう問題ない」
「本来なら一か月なんだこんな…」
「嘘をつけ」
「栄養失調」
ああ、なんだか説教をされる学生の気持ちを汲めた気がする。
「気をつけろよ」