☆Friend&ship☆ -序章-
「何か御用ですか」
俺は感情のない声で‟声”に言った。
「ああ。ただ、伝えにね」
「何を」
「そこの御嬢さんにさ、‟希望なんてない”って」
「違う!俺は…」
「…それだけならお帰りください。」
「そうだな!!」
「…」
高らかに笑う‟声”を冷たく聞き流していたが、あまりにもゼウスが震える。
俺はゆっくりと振り返って両腕をゼウスの胴に回した。
左腕をゼウスの頭の後ろに置き、引き寄せる。
柔らかな金髪が首元に当たってくすぐったい。
「…知ってる」
「!!」
一瞬ビクンと震えたゼウスは固まった。
「全部。でも、トラウマなんて知らない。」
「…イヤだ」
「…許せ…魔法解除」
ふっと軽くなったゼウス…いや、今は違うか…
「嫌だ…」
苦しそうに涙声で主張してくる。
俺は左手はそのままに右手を背中側から膝へ回し、そのまま右手を円の一角を描くように右上へ。
少しだけ左手を肩へとずらす。
身をゆだねさせるために足がわを通常よりも上に。
重力に耐え切れなくなった頭はカクンと落ちる。
つまり世にいうお姫様抱っこ。
悪いがジェット機位なら片手で放り投げられるくらいの腕力はある。
…腕を回せばいいのに。
そんなことを思いながら俺は船室へと歩を進めた。