☆Friend&ship☆ -序章-
漆黒のコート。
金の留め具のブーツ。
革の手袋。
紅の瞳には黒のアイコンタクト。
いつもの格好だ。
前方約300mには大きな町。
情報が正しければあの町はグループ、"Carin”を中心とした比較的大規模な闇市が開かれる。
目的?
…情報屋と商売。
あとはあいつらに土産を買わなければ、だ。
オアシスのようなその町に入れば、まずは鼻をつく香水の香り。
むんむんとした熱気につつまれながら俺は歩いた。
「お兄さん、ちょいとお待ちよ?」
「…」
危ない声してやがる。
無視することもできず俺は声をかけてきた女を振り返った。
「ここらじゃ見かけない顔。旅の人?どこから来たの?」
「…悪いがお前に教える義理も理由もない。先へ行きたいんだが」
冷たくいい放つと怯むはずの女が逆に笑みを浮かべて近づいてきた。
香水の匂いがプンプンする。
気持ちが悪い。
「奢るよ、お酒でもどう?」
新手の詐欺か。
どうせ俺を潰して逃げる気だろうが。
「今はいい。急いでるんだ」
「良いじゃない。すこしよ」
しつこい。
巻きすぎの髪が俺の頬に当たる。
本当に気分が悪い。
「他の男を誘え。あいにく俺は急ぐんだ」
俺は女を無視して通りすぎた。
…ついでに、俺のコートに忍ばせられた発信機をグシャリと握り潰して。
後ろで女が顔を歪ませた。