聖夜は恋の雪に埋もれて
 お昼休み、前の席の松嶋さんが、仲良しのクラスメイトに「モカショコランド行ってきたよ~。ナイトパレード最高!」と言ったとき、私は思い出した。
 そうだ、奏を遊園地に誘わないと。

「ねえ、今週末、遊園地に行かない? 今、期間限定のパレードをやってるみたいだから。予定あいてるかな?」
 奏の席まで行って、私は声をかけた。
 すると……。
 奏はすぐに答えてくれたんだけど、その直前、ほんの一瞬、奏の身体がピクリと動いたのが気になった。
 よくよく見ていないと気づけないほどの、些細なことだけど、私たちはかれこれ13年以上の付き合いだから、すぐ分かる。
「ごめん、今週末はちょっと無理だ。また今度でもいい?」
「そっか、予定が入っているなら仕方ないね。こちらこそ、突然誘ってごめんね」
「気にするなって。今度、行こう。土日で予定あいてる日をまた調べておくから。たしかあのパレードって、今月いっぱいやってるんだったよな?」
 そうだっけ。
 奏が近くにいたクラスメイトに聞いて確認してくれたところ、どうやら奏の言うとおり、12月いっぱいはパレードをやっているみたいだった。
「またこっちから誘うよ。ほんと、ごめんな」
「ううん、気にしないで」
 何度も謝ってくれる奏に、逆にこっちが申し訳なくなってくる。
 今週末に行けないのは残念だけど、今月中には一緒に行けるみたいで、心がうきうきした。
 でも……。
 二人でロマンチックなパレードを見に行くってこと、奏は何も思わないのかな。
 やっぱり、奏にとっての私は、単なる幼馴染で、恋愛対象にはなりっこないかもしれないんだということを、改めて感じさせられた。
 少し……切ない。

 そこへ、お手洗いから帰ってきた瑠璃が、教室に戻ってきたので、私は奏に「じゃあね」と言ったあと、自分の席へ戻った。
 いつも私の席で、瑠璃や他の友達と一緒に、お弁当を食べているから。
 ほんとは奏とも一緒に食べたいんだけど、奏はよく仲良しの男子と一緒に食べていて、誘う勇気がなくて……。



「瑠璃、今週末また一緒にカラオケでもどう?」
 瑠璃とはしょっちゅうカラオケへ行っているので、いつも通りの感じで聞いてみた。
 今週末は奏とも遊べず、バイトもないし、暇だから。
「土曜は無理だけど、日曜はオッケー! またカラオケへ行こう行こう!」
 瑠璃は、嬉々とした様子で答えてくれる。
 日曜、また楽しみ!

 その後、私たちはいつも通りに、一緒にお弁当を食べた。
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